昨年夏に2号店「花田・鈴蘭」をオープンし、破竹の勢いを見せていた花田グループ。それだけに、春節以降の営業中断は彼らの出鼻を大いにくじいたことだろう。
3月11日午後、花田の総責任者である譚仲華(以下譚)さんが取材に応じてくれた。
譚:もともと挑戦したい事や、計画していた事もありましたが、今は一旦脇に置いておかなければなりません。しばらく様子を見ようと思います。
営業停止中は、全ての従業員に自宅待機をするように伝えました。その方が一人ひとりの健康のためにも、それぞれの家族のためにもなります。
飲食店に勤める人たちは、我々が想像している以上に忙しい。週休一日は当たり前、店長クラスになると、一週間で半日休むことが出来れば良いほうだと言う。
折角の休みだからと家族の側にいてあげるように伝えていたにも関わらず、情熱の注ぎどころを失った従業員たちは燻っていた。ニュースを見ると、アウトブレイクした武漢の悲惨な現状や、第一線で働く医療従事者の献身ぶりが伝わってくる。
「私たちに今できることは何か?」
従業員のグループチャットでは、このような会話が連日繰り広げられていたという。そこで、ある従業員がこんな提言をした。
まずは身の回りで
頑張っている人達を助けよう
彼らが思いついたのは、自分たちのコミュニティーのために感染予防の宣伝を行ったり、住民のために防疫対策を施している街道工作委員会への寄付だった。
譚:彼らは住民の安全のために、団地やマンションの入り口に検温・登録ゲートを設けたり、管轄区域の商店に対して防疫の注意点を指導して回りました。私たちが暖かい家の中にいるのに、寒空の中、休日返上で働いてくれています。また高圧的なところもなく、住民との対話を大切にしていた印象があります。
そこで花田は、街道弁事工作委員会で働く人たちのためにお米を贈ることにした。花田本店と号店を管轄する二箇所の街道工作委員会で働く200人のスタッフのために、一人あたり5kgのお米を合計で200袋贈った。これはお店でも供されている上質の白米だ。
五大道街道工作委員会にて工作委員会のスタッフと。
店内に備蓄していたものではなく、今回のためにわざわざ業者から取り寄せた。
譚:武漢に向けて救援物資を送ることも考えましたが、自分たちに出来ることは限られています。ならば自分の力が及ぶ範囲で、誰かのためにためになることをしよう。何よりも私たちの生活を直接守ってくれている人に感謝の意を伝えたかったのです。後になって知ったことですが、個人的に武漢へ義援金を送っているスタッフもいたようです。
花田のスタッフ自らの手で物資を届けると、工作委員会からは感謝状が手渡された。防疫工作で東奔西走していたスタッフたちは、久しぶりに相好を崩したという。
それぞれがお互いの立場を理解し、お互いのために出来ることを、自分の力の範囲で行う。これは今回の危機を乗り越えるために、私たち全員が持ち合わせなくてはいけない心がけではないだろうか。
譚:今それぞれのお店にとっての心配事は、家賃を減免してくれるかどうかだと思いますが、オーナーもまた銀行にお金を返す必要があり、同じ様に苦境に立たされているはずです。なので過度に期待したり、個人の利益ばかりを主張するべきではないと思います。ピンチだからこそ、お互いの立場を理解した上で、お互いのためになる選択をするのが一番いいことだと思います。
复工に向けて
取材を行ったのは3月11日の午後。
自動扉を開けると、「津门战疫」のQRコードと注意書きが貼られていた。
臨時に設けた受付には非接触式の体温計と消毒液、来客の情報を記録するためのノートがある。厨房では料理人さんが宅配弁当の仕込みをしていた。
譚:今は営業再開に向けて準備を始めている段階です。お弁当の宅配は11日から始めました。こんな状態ですので、あまり多くの売上は期待できませんが、営業再開に向けてのアイドリングにはなるかと思います。体調を崩さず、最高のコンディションで再開したいので、仕事時間は普段より短めです。11:00に出勤して19:30には上がってもらっています。
大部分のスタッフには自宅待機をしてもらっていますが、早く職場に戻りたくてウズウズしているそうです(笑)。今回の非常事態で、みんなの日本料理に対する情熱を再確認できました。
花田のスタッフは「復工」の日を心待ちにしています。
取材協力:花田
http://www.df-manage.com/landing/list/hanada.html
【花田・鈴蘭】
天津市和平区山西路288号(ウェスティン向かい)
159-2215-9220
【花田】
天津市和平区山西路12号
158-2251-3553